作者名ア行

芦辺拓『ダブル・ミステリ (月琴亭の殺人/ノンシリアル・キラー) 』(東京創元社)レビュー

ダブル・ミステリ (月琴亭の殺人/ノンシリアル・キラー)作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/12/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る ギミック重視のものになると、作者のコンセプチュアルな気配りが、一筋縄ではいかない…

石持浅海『パレードの明暗 座間味くんの推理』(光文社)レビュー

パレードの明暗 座間味くんの推理作者: 石持浅海出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/10/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る お久しぶりの座間味くんシリーズで、作者ならではのシュールな論理のアクロバットが愉快に満…

歌野晶午『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』( KADOKAWA)レビュー

Dの殺人事件、まことに恐ろしきは作者: 歌野晶午出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2016/11/02メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 『死体を買う男』と『密室殺人ゲーム』シリーズの作者ならではの、テクノグロナンセンスとサプライズの饗宴…

芦沢央『許されようとは思いません』(新潮社)レビュー

許されようとは思いません作者: 芦沢央出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 今年のベストテンで高評価を得た短編集。出てすぐ読んだから、てっきりもう取り上げたもんだと思っていたが、まだだっ…

浅野里沙子 『藍の雨』(ポプラ社)レビュー

藍の雨作者: 浅野里沙子出版社/メーカー: ポプラ社発売日: 2016/08/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 時代小説をメインフィールドとしてきた作者が、単著として現代に時間を移したコレクター・ミステリーの連作集。濃やかな筆遣いで、収集家た…

岡田秀文『月輪(がちりん)先生の犯罪捜査学教室』(光文社)レビュー

月輪(がちりん)先生の犯罪捜査学教室作者: 岡田秀文出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/09/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る シリーズの新作は、こういうアプローチできましたか。趣向を凝らしてる得意げな雰囲気でなく、むしろ恬淡と…

市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』(東京創元社)レビュー

ジェリーフィッシュは凍らない作者: 市川憂人出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/10/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る 今年の鮎川賞は快作。新本格の原点回帰だね(分かる人だけ)。冒頭の素材工学的言及から恐る恐る紐解いてい…

綾辻行人『深泥丘奇談・続々』( KADOKAWA)レビュー

深泥丘奇談・続々 (幽BOOKS)作者: 綾辻行人出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2016/08/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る このシリーズ5年ぶりの作品集だが、一区切りだそうで、ちょい寂しい。だけれども、この連作の長所だが…

我孫子武丸『裁く眼』(文藝春秋)レビュー

裁く眼作者: 我孫子武丸出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/08/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 異色の法廷ミステリーで、裁判進行の描写が必要最小限に留められているのがいい。裁判もののコクを求める読者には物足りないかもしれ…

大倉崇裕『スーツアクター探偵の事件簿 』(河出書房新社)レビュー

スーツアクター探偵の事件簿作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/06/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 作者に思い入れがあるような題材だと、物語の緩急自在さとか語り口の軽快さとかキャラの立ち上がり方など、小…

伊坂幸太郎『サブマリン』(講談社)レビュー

サブマリン作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/03/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (16件) を見る 文体と作風から寓話的アプローチの印象が強く残ってしまう作者だが、この作品は、ミステリー的結構の前作とは一線を画して、社会…

折原一『死仮面』(文藝春秋)レビュー

死仮面作者: 折原一出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/04/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 相変わらず、滑稽で、怖いぞ。作者特有のいかがわしさが、B級ニュースから醸し出される現実のチープさからくるのか、人間の狂いっぷりの…

青崎有吾『ノッキンオン・ロックドドア』(徳間書店)レビュー

ノッキンオン・ロックドドア (文芸書)作者: 青崎有吾出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2016/04/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 作者の作品の中では、一番いいと思う。戦略的ラノベ臭を醸し出す従来の小説と一線を画し、推理コントに…

大崎梢『誰にも探せない』(幻冬舎)レビュー

誰にも探せない作者: 大崎梢出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/02/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 作者にしては、いささか物騒な空気を漂わせているけれども、社会派的要素を混ぜこんでいるので、大学生という主人公の設定が、埋蔵…

青崎有吾『図書館の殺人』(東京創元社)レビュー

図書館の殺人作者: 青崎有吾出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/01/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る シリーズ第4弾で長編第3作目の本作は、ロジカルな構築性がシュールなかたちで決まっていて、申し分ない。だから問題は、小…

大倉崇裕『ペンギンを愛した容疑者 警視庁総務部動植物管理係 』(講談社)レビュー

ペンギンを愛した容疑者 警視庁総務部動植物管理係作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/11/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る シリーズ第三弾だが、あまりの安定ぶりに、もうすでに何冊も出たもんだと思…

石持浅海『罪人よやすらかに眠れ』(KADOKAWA)レビュー

罪人よやすらかに眠れ作者: 石持浅海出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/12/02メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 本作品集にしても、『凪の司祭』にしても、作者ならではのものだが、後者の方は設定がハデな分、作者の濃やか…

織守きょうや『黒野葉月は鳥籠で眠らない 』(講談社)レビュー

黒野葉月は鳥籠で眠らない作者: 織守きょうや出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/03/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 友井羊『さえこ照ラス』はユニークな舞台設定とアプローチでひとまず愉しめた作品集だったが、法…

石持浅海『凪の司祭』(幻冬舎)レビュー

凪の司祭作者: 石持浅海出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/10/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る まあリアルなホラーとして読むべきなんでしょうね。都市空間の破滅的なまでの空虚性を、テロリズムの寓話として示したともいえるけれど…

碇卯人『杉下右京の多忙な休日』(朝日新聞出版)レビュー

杉下右京の多忙な休日作者: 碇卯人出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2015/10/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る いや、すっかり年に一度のお愉しみになりました。中編二本という体裁は、それぞれがドラマ化しやすいからかな。正攻法…

井上真偽『その可能性はすでに考えた』(講談社ノベルズ)レビュー

その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)作者: 井上真偽出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/09/10メディア: 新書この商品を含むブログ (15件) を見る 本格ミステリ界隈では評判がよく、実際面白い。だが、本来は、もっと面白くなるはずではないか。スノ…

有栖川有栖『鍵の掛かった男』(幻冬舎)レビュー

鍵の掛かった男作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/10/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (14件) を見る 作者があとがきで滲ませているのは、新境地であることを自認する、ということだろう。作者は、ロジカルな作風を維持しながら…

大山誠一郎『赤い博物館』(文藝春秋)レビュー

赤い博物館作者: 大山誠一郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/09/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 警察小説の型を借りて本格ミステリを書く場合、作中で扱われている警察機構自体に何らかのギミックを仕掛けないと、納まりが悪く…

天祢涼『謎解き広報課』(幻冬舎)レビュー

謎解き広報課作者: 天祢涼出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/05/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 連作形式のお仕事系ミステリーだが、作者に対する期待値には応えてくれる。幻想系とも漆原シリーズのようなファースとも、それとはき…

大倉崇裕『福家警部補の追及』(東京創元社)レビュー

福家警部補の追及 (創元クライム・クラブ)作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/04/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る シリーズ新作は中編二本だが、ドラマの起伏の興味を狙う作者の意識は、倒叙ミステリがマンネリを…

市井豊『人魚と金魚鉢』(東京創元社)レビュー

人魚と金魚鉢 (ミステリ・フロンティア)作者: 市井豊出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/02/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 シリ…

麻見和史『警視庁文書捜査官』(KADOKAWA)レビュー

警視庁文書捜査官作者: 麻見和史出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/01/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る なにやら意味ありげな部署に配属されたふたりの刑事が遭遇する奇怪な連続殺人。事件自体のトリッキーさに作者の持…

赤瀬川原平『妄想科学小説』(河出書房新社)レビュー

妄想科学小説作者: 赤瀬川原平出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/01/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 80年代前夜に連載された、マボロシの掌編小説(からのエッセー)集。シュールさの追求は、エコノミーのロジックのほんの少し…

江國香織『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』(朝日新聞出版)レビュー

ヤモリ、カエル、シジミチョウ作者: 江國香織出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2014/11/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る 作者の筆致は、まさに大家というに相応しい、悠々たるもの。ある種の繊細さは、社会通念で満たされた世界…

安萬純一『青銅ドラゴンの密室』(南雲堂)レビュー

本日のエピグラフ 大ドラゴンとそのまわりの小ドラゴンたちが全身を光輝かせていた。雷がドラゴンたちを生き返らせ、雄叫びを上げさせたのだ。(p.30) 青銅ドラゴンの密室 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)作者: 安萬純一出版社/メーカー: 南雲堂発売…