2019-01-01から1年間の記事一覧

伊藤たかみ『ぼくらのセイキマツ』(理論社)レビュー

ぼくらのセイキマツ作者: 伊藤たかみ出版社/メーカー: 理論社発売日: 2019/04/16メディア: 単行本この商品を含むブログを見る やっぱり凡百のコドモダマシ作家と違って、文章の息遣いの上手いこと巧いこと。ゆるやかに主人公たちを襲う焦燥感と停滞感。世間…

加藤典洋さん、お疲れ様でした。

9条入門 (「戦後再発見」双書8)作者: 加藤典洋出版社/メーカー: 創元社発売日: 2019/04/19メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 加藤典洋さんの訃報には、ただただ悄然とするばかり。デビュー作が『アメリカの影』で、遺作が『9条入門』って、出来過…

西澤保彦『夢の迷い路』(幻冬舎)レビュー

夢の迷い路作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 光文社発売日: 2019/03/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る<br> いつのまにか始まった新シリーズ、いずれも一筋縄ではいかぬアクロバティックなロジックが冴えるが、作者のものとしてはそ…

大塚英志『感情天皇論 』 (ちくま新書)レビュー

感情天皇論 (ちくま新書)作者: 大塚英志出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2019/04/05メディア: 新書この商品を含むブログを見る 著者の久々の文芸批評ということで、なかなかの手応え、はある。平成天皇をめぐる文学者たちの屈託を剔出する手際は、著者独自…

武田砂鉄 最果タヒほか『平成遺産』(淡交社)レビュー

平成遺産作者: 武田砂鉄,最果タヒ,みうらじゅん,ブレイディみかこ,栗原康,田房永子,川添愛,川島小鳥出版社/メーカー: 淡交社発売日: 2019/02/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る リベラル左派系論者を中心にした「平成」をめぐる…

大塚英志『大政翼賛会のメディアミックス 「翼賛一家」と参加するファシズム』(平凡社)レビュー

大政翼賛会のメディアミックス:「翼賛一家」と参加するファシズム作者: 大塚英志出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2018/12/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 久々に読む大塚英志のサブカル批評・研究本だが、この「メデ…

若竹七海『殺人鬼がもう一人』(光文社)レビュー

殺人鬼がもう一人作者: 若竹七海出版社/メーカー: 光文社発売日: 2019/01/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 作者の底意地の悪さが瀰漫しているような連作集。うーん、若竹作品のなかでも、かなり毒気に当てられる本だぞ。ケー…

アニメ『風が強く吹いている Vol.1 』(東宝)レビュー

アニメ「風が強く吹いている」 Vol.1 Blu-ray 初回生産限定版出版社/メーカー: 東宝発売日: 2019/01/16メディア: Blu-rayこの商品を含むブログを見る 原作未読のまま、半年間見た。ほぼオトコしか出てこないのに、男臭くないのは長所。ていうか、いい意味で…

堀内公太郎『タイトルはそこにある』(東京創元社)レビュー

タイトルはそこにある (ミステリ・フロンティア)作者: 堀内公太郎出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/05/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る どうもキワモノめいたタイトルの作品ばかり刊行しているようで興味が湧かなかったが、創…

今村昌弘『魔眼の匣の殺人』(東京創元社)レビュー

魔眼の匣の殺人作者: 今村昌弘出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/02/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る いやー、バカウケのデビュー作より、数段こっちのほうがいいっすよ。新本格の異世界路線の久々の特大ホームラン。まあ、〇〇殺人を…

山田彩人『皆殺しの家』(南雲堂)レビュー

皆殺しの家 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)作者: 山田彩人出版社/メーカー: 南雲堂発売日: 2018/11/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る お久しぶりの作者で、無理矢理気味のあるトリックミステリ連作として愉しめるが、作者の持…

鵜林伸也『ネクスト・ギグ』(東京創元社)レビュー

ネクスト・ギグ (ミステリ・フロンティア)作者: 鵜林伸也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る昨年評判を得たデビュー作。サブカルをテーマにした作品は、総じて深く掘ったものになればなるほど…

山本巧次『開化鐵道探偵 第一〇二列車の謎』(東京創元社)レビュー

開化鐵道探偵 第一〇二列車の謎 (ミステリ・フロンティア)作者: 山本巧次出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/12/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る シリーズ第二弾。脱線した貨車から千両箱が発見されるという惹きつけられる導入か…

中山七里『静おばあちゃんと要介護探偵』(文藝春秋)レビュー

静おばあちゃんと要介護探偵作者: 中山七里出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/11/28メディア: 単行本この商品を含むブログを見る<br> 社会派ミステリをマンガ的な勧善懲悪ドタバタ路線へと折衷させてみせたのは作者ならではという感じで、やや荒唐無稽なト…

芦辺拓『少年少女のためのミステリー超入門 』(岩崎書店)レビュー

少年少女のためのミステリー超入門作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 岩崎書店発売日: 2018/11/09メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る いいっすねえ。芦辺拓くらいになるとミステリ愛好家を超えて、ミステリ文化伝承者といったような格…

降田天『すみれ屋敷の罪人』(宝島社)レビュー

すみれ屋敷の罪人 (『このミス』大賞シリーズ)作者: 降田天出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2018/12/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る デビュー作はつまらなそうな梗概だったのでスルーしたけれども、いつのまにか短編で推協賞を受賞したという…

青崎有吾『早朝始発の殺風景 』(集英社)レビュー

早朝始発の殺風景 (単行本)作者: 青崎有吾出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/01/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る オーソドックスな青春ミステリの佳品五編と、蛇足だったエピローグ。いやねえ、余計なもん付け足して判じ物にしなくてもねえ…

米澤 穂信『本と鍵の季節 』(集英社)レビュー

本と鍵の季節 (単行本)作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 集英社発売日: 2018/12/14メディア: 単行本この商品を含むブログを見る ホームズとワトソン的な権威主義的関係性から脱して、しかし純粋なバディものとも違う、男子高校生ふたりのいささかディスコミュ…

伊吹亜門 『刀と傘  明治京洛推理帖 』(東京創元社)レビュー

刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)作者: 伊吹亜門出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 歴史ミステリーの異色作だが、文章はこなれていて読みやすく、歴史ものに縁遠い読者にも…

阿津川辰海『星詠師の記憶』(光文社)レビュー

星詠師の記憶作者: 阿津川辰海出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/10/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る<br> どうも若手の書く異世界系本格が苦手になってきている。異世界構築を本格ミステリ的興味でやるのはいいけれども…

霞流一『パズラクション 』(原書房)レビュー

パズラクション (ミステリー・リーグ)作者: 霞流一出版社/メーカー: 原書房発売日: 2018/08/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る これぞ正真正銘のアンチミステリっていっていいものやら。作者の作風であるいかがわしさがキャラ造型レベル…

岡崎琢磨『夏を取り戻す』(東京創元社)レビュー

夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)作者: 岡崎琢磨出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/09/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 作者の作品はあまり読んでないけれど、本作は作者のポテンシャルを示し得た、というのとはまた違う…