2013-01-01から1年間の記事一覧

知念実希人『ブラッドライン』(新潮社)レビュー

ブラッドライン作者: 知念実希人出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 福ミス受賞後第一作は、大満足。冒頭のド迫力シーンで読み手をツカんで、後はいささかも予断を許さずに、サスペンスを持続させ…

高林さわ『バイリンガル』(光文社)レビュー

バイリンガル作者: 高林さわ出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/05/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 第5回福ミス受賞作。やや無骨な手付きを思わせるが、中盤あたりからドライブがかかり、サスペンス・スリラーとして満足できる。ミ…

小島正樹『永遠の殺人者  おんぶ探偵・城沢薫の手日記』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)ほかにひどい体験をした場合、回避行動という症状が出る。その名のとおり事件の起きた場所や、事件を喚起させるものを、意識的に、あるいは無意識に避けようとするんだ。(…)」(p.141) 永遠の殺人者 おんぶ探偵・城沢薫の手日記作者: …

小林泰三『アリス殺し』(東京創元社)レビュー

アリス殺し (創元クライム・クラブ)作者: 小林泰三出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/09/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (29件) を見る 辻真先『アリスの国の殺人』がファース仕立ての大人の絵本だとすると、本作はブラック・ユーモア風味の…

大倉崇裕『白戸修の逃亡』(双葉社)レビュー

白戸修の逃亡作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2013/09/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) を見る んん、まさかこのシリーズ、まとめに入っているんじゃないんでしょうね、とうっすら危惧しつつ、巻き込まれ&他力…

太田忠司『ミステリなふたり a la carte』(東京創元社)レビュー

ミステリなふたり a la carte (創元クライム・クラブ)作者: 太田忠司出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/08/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る お久しぶりのシリーズ連作。インターバルが長い分、作り込まれている印象がある。密室…

有栖川有栖『菩提樹荘の殺人』(文藝春秋)レビュー

菩提樹荘の殺人作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/08/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 冒頭の話に顕著だけれども、探偵小説空間に社会性を浸潤させるアプローチが、いかにも自然なことのようになってきた。なん…

2013年9月版

ディーヴァーの新作長編が目前だというのに、短編集が読めていない。今月は、ちょい前の落穂拾い――というのには失礼に当たる面白さだった『KGB』。ハードボイルドやね。因果者やね。未だに亡霊はアメリカにも徘徊しているんやね。カミングの今年二作目の…

梓崎優『リバーサイド・チルドレン』(東京創元社)レビュー

リバーサイド・チルドレン (ミステリ・フロンティア)作者: 梓崎優出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/09/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (20件) を見る 作者に求められているのは、こんな感じなのか、と。物語は、殺人の動機に収斂していくが…

青崎有吾『水族館の殺人』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「頭はいいし、嘘はつかんし……こんな素敵な相棒は、他にいないよ」/(…)/「僕はあまり、信用できませんけど……」(pp.248‐249) 水族館の殺人作者: 青崎有吾出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/08/11メディア: 単行本この商品を含むブ…

雫井脩介『検察側の罪人』(文藝春秋)レビュー

検察側の罪人作者: 雫井脩介出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/09/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る 思い切った設定と展開で、社会派の枠組みを突破した感がある。物語自体のサスペンスは濃厚に演出されるものの、人物造型がやや…

北山猛邦『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』(講談社ノベルス)レビュー

猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条 (講談社ノベルス)作者: 北山猛邦出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/01/09メディア: 新書 クリック: 9回この商品を含むブログ (17件) を見る 探偵小説の脱構築を、ギミック重視でも、あまりファース仕立てにせずに、正攻…

河合莞爾『ドラゴンフライ』(角川書店)レビュー

ドラゴンフライ作者: 河合莞爾出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/07/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 横正賞受賞後第一作目は、アイデアの質と量、予断を許さぬプロット展開で、愉しめる。が、小説の結構という点では、惜しいので…

相沢沙呼『マツリカ・マハリタ』(角川書店)レビュー

マツリカ・マハリタ (単行本)作者: 相沢沙呼出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/08/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (15件) を見る シリーズ第二集。主人公のヘタレさ加減に磨きがかかっているのに、日常の謎解きよりも、目がいってしまうのは、…

黒川博行『離れ折紙』(文藝春秋)レビュー

離れ折紙作者: 黒川博行出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/08/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 美術骨董業界のコンゲーム風ピカレスク短編集。作者のもうひとつの太刀筋で、虚飾の生臭さと皮肉な運命の背中合わせで、小説の渋みが…

柳広司『楽園の蝶』(講談社)レビュー

楽園の蝶作者: 柳広司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/06/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 満州・満映を舞台に張り巡らされる陰謀を描いているわりには、恬淡とした印象を抱かせる。作者であれば、もっと時代の空気を濃密に醸し出…

樋口有介『風景を見る犬』(集英社インターナショナル)レビュー

風景を見る犬作者: 樋口有介出版社/メーカー: 集英社インターナショナル発売日: 2013/08/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 沖縄に居を移したらしい作者の、原点(数ひねり)回帰の会心作。沖縄の泥臭いミクロコスモスを、青年期のちょいシ…

石持浅海『三階に止まる』(河出書房新社)レビュー

三階に止まる作者: 石持浅海出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/07/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る あはは、いいねえ。作者の独特のロジックの切れを、様々なシチュエーションで試してみたら……という関心で、読み手を引っぱる…

東川篤哉『ライオンの棲む街  平塚おんな探偵の事件簿1』(祥伝社)レビュー

ライオンの棲む街 ~平塚おんな探偵の事件簿1~ (平塚おんな探偵の事件簿 1)作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/08/09メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (10件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレ…

中山七里『七色の毒』(角川書店)レビュー

七色の毒作者: 中山七里出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/07/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 前作の主人公刑事が活躍するシリーズ…

綾辻行人『Another エピソードS』(角川書店)レビュー

Another エピソード S作者: 綾辻行人出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/07/31メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (21件) を見る いかにも、この作者らしいなあ、こういう質感を持った小説を書いてくれるのは、この人しかいないよね、と。ギミ…

真保裕一『正義をふりかざす君へ』(徳間書店)レビュー

正義をふりかざす君へ作者: 真保裕一出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2013/06/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る 一筋縄ではいかない構図のストーリーを得意としてきた作者が、権力悪との対決をストレートに描いた。といっても、プロ…

鳥飼否宇『憑き物』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)イヅナは『障る』動物なんだ。人間にとっては悪い霊だ。キミの言い方に従えば、イヅナはすべて黒イヅナなんだよ。善良な白イヅナなんて存在しない」(「幽き声」p.31) 憑き物 (講談社ノベルス)作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 講談社発…

2013年8月版

フロストは、初紹介からもう二十年近く。果たして、日本の警察小説は、フロストから何か学んだのだろうかしらん。犯罪喜劇はUKのお家芸っていってもねえ。『ジェイコブ』は、家族小説でここまで「遺伝子」という問題性を劇的に扱ったのも、あまりないだろ…

我孫子武丸『狼と兎のゲーム』(講談社)レビュー

狼と兎のゲーム作者: 我孫子武丸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/07/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (7件) を見る あとがきにもある通り、キング的スリラーを作者のテイストで描いて、やるせない印象を残す結末まで、きっちり…

竹吉優輔『襲名犯』(講談社)レビュー

襲名犯作者: 竹吉優輔出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/08/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 何年か前に、某誌の評論家座談会で、出席者のひとりが、乱歩賞の常連投稿者がついに受賞したことに対して、受賞してもらわないとあとが…

伊与原新『ルカの方舟』(講談社)レビュー

ルカの方舟作者: 伊与原新出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/06/07メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る あれ。もしかしたらSFミステリだった? 作者が横溝賞を受賞したときに、乱歩賞候補作に残っていた作品を改稿した…

真梨幸子『鸚鵡楼の惨劇』(小学館)レビュー

鸚鵡楼の惨劇作者: 真梨幸子出版社/メーカー: 小学館発売日: 2013/07/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る サイコ・スリラーだけれども、作者が求められているのは、こんな感じなのかしらん。アモラルなガジェットを、あくまでB級感の領域…

友井羊『ボランティアバスで行こう!』(宝島社)レビュー

ボランティアバスで行こう!作者: 友井羊出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2013/04/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る デビュー後第一作は、連作短編集で、効かせたギミックが、主題性とカタルシスに直結して、いい感じ。それぞれの人生の…

芦辺拓『奇譚を売る店』(光文社)レビュー

奇譚を売る店作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/07/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る かくも救いがたき因業を、迷うことなく(?)ホラーに仕立てるのは、才覚資質というよりも、度胸と風格ということなのかも。奇譚に捧げ…