作者名マ行

明利英司『旧校舎は茜色の迷宮』 (講談社ノベルス)レビュー

旧校舎は茜色の迷宮 (講談社ノベルス)作者: 明利英司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/08/07メディア: 新書この商品を含むブログ (7件) を見る 今年の福ミス候補作は、受賞作以外はすべて優秀作として世に出ることになったが、その一冊目。青春ミステリ…

三津田信三『どこの家にも怖いものはいる』(中央公論新社)レビュー

どこの家にも怖いものはいる作者: 三津田信三出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2014/08/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ホラーの定型的プロットは、日常を攪乱する表象をバラ撒いたうえで、さらに物語の結構それ自体を不条理な領…

麻耶雄嵩『さよなら神様』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ 「それで僕が君の望む未来に作り替えたとして、果たして君は作り替えたという僕の言葉を信じるのかい? 最初からこれが真実で、僕を嘘つき呼ばわりして、自分を誑かそうとしたと疑うだけだろうね」(「ダムからの遠い道」p.102) さよなら神…

森晶麿『偽恋愛小説家』(朝日新聞出版)レビュー

偽恋愛小説家作者: 森晶麿出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2014/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 面白いです。手が込んでいるわりには、サクサク読めます。予定調和的雰囲気を壊しそうで壊さない、でもガタガタいわす程度のこ…

森晶麿『COVERED  M博士の島』(講談社)レビュー

COVERED M博士の島作者: 森晶麿出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/04/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る まあ、ミステリーというより、ホラーなんでしょう。設定が極端な分、サスペンスが小説を盛り上げるには至らないけれども、作者…

真梨幸子『人生相談。』(講談社)レビュー

人生相談。作者: 真梨幸子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/04/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (14件) を見る 面白い。露悪系ミステリで我が道を行く作者が、あからさまなまでにギミックを利かせると、本当に小説全体がお化け屋敷っぽくなると…

湊かなえ『豆の上で眠る』(新潮社)レビュー

豆の上で眠る作者: 湊かなえ出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/03/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (20件) を見る 作者自身のドメスティック・スリラーの行き方を、過不足なく示した感じ。このプロットを短編でやれば、ギミックのソリッドさが際…

道尾秀介『貘の檻』(新潮社)レビュー

貘の檻作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/04/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (22件) を見る 作者にとって久々の本格ミステリーということになるのだろうが、むしろ、近年作者が鍛え上げたリリシズムが、サスペンスの器を瑞々しく…

深木章子『殺意の構図  探偵の依頼人』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ (…)まっすぐ警察に行かず、私立探偵を雇うことを選択する人間は、表に見えている以上の問題をうちに抱えている。彼らを動かしているいるものは不安、もっといえば恐怖だ。(…)(p.5) 殺意の構図 探偵の依頼人作者: 深木章子出版社/メーカー: …

宮部みゆき『ペテロの葬列』(集英社)レビュー

ペテロの葬列作者: 宮部みゆき出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/12/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (44件) を見る 作者の時代に対するモラルのありようを探求する姿勢が、ミステリーの構築性と緊密に繋がっており、未だに安心して読める。原罪…

森晶麿『名無しの蝶は、まだ酔わない  戸山大学〈スイ研〉の謎と酔理』(KADOKAWA)レビュー

名無しの蝶は、まだ酔わない 戸山大学〈スイ研〉の謎と酔理 (単行本)作者: 森晶麿出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2013/12/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 正直、作者の作風にはついていけないかなあ、と思っていたところ…

皆川博子『アルモニカ・ディアボリカ』(早川書房)レビュー

アルモニカ・ディアボリカ (ミステリ・ワールド)作者: 皆川博子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/12/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る いやはや、まだまだ御大の膂力は衰えず。歴史ミステリーでありながら、“歴史”を表象する諸装…

前田司郎『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(集英社)レビュー

ジ、エクストリーム、スキヤキ作者: 前田司郎出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/10/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る ミステリ界がパッとしない年だったので、純文方面へ久しぶりに、ちと浮気。映画化というPRに特につられたワケ…

松尾由美『わたしのリミット』(東京創元社)レビュー

わたしのリミット作者: 松尾由美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/09/28メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 日常の謎系のドラマを、成長小説的範型からややずらしたところに設定する意識が、作者にはあるのだろう。カタルシスは、存在する…

丸山天寿『死美女の誘惑 蓮飯店あやかし事件簿 』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「でも、それはどうでも良いことではありませんか。あの方はこの世でも、次の世でも女性の味方のようですから」(「第一話 死美女の誘惑」p.64) 死美女の誘惑 蓮飯店あやかし事件簿 (講談社ノベルス)作者: 丸山天寿出版社/メーカー: 講談社…

麻耶雄嵩『貴族探偵対女探偵』(集英社)レビュー

本日のエピグラフ 「では、私が依頼すればいいわけか。それなら君の名分もたつしな」/(…)/「どういう意味? あなたは探偵なんでしょ。探偵が探偵に依頼するなんて聞いたことがないわ」(「むべ山風を」p.132) 貴族探偵対女探偵 (貴族探偵)作者: 麻耶雄嵩出…

三沢陽一『致死量未満の殺人』(早川書房)レビュー

致死量未満の殺人作者: 三沢陽一出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/10/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル8 インプレッション7 トータル39 今年のクリスティー賞は、…

真梨幸子『鸚鵡楼の惨劇』(小学館)レビュー

鸚鵡楼の惨劇作者: 真梨幸子出版社/メーカー: 小学館発売日: 2013/07/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る サイコ・スリラーだけれども、作者が求められているのは、こんな感じなのかしらん。アモラルなガジェットを、あくまでB級感の領域…

松井今朝子『壺中の回廊』(集英社)レビュー

壺中の回廊作者: 松井今朝子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/06/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 小説の上手さは、濃やかな描写もさることながら、それがテンポというか、言葉配りの調子を整えることに基礎づけられており、読んで…

松本寛大『妖精の墓標』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「妖精というのは一種の幻覚なのでしょうか」/「幻覚といえば幻覚、夢といえば夢なんでしょうが、そうした単純なものでもありません。もっと実在感があるし……」(p.44) 妖精の墓標 (講談社ノベルス)作者: 松本寛大出版社/メーカー: 講談社…

前川裕『アトロシティー』(光文社)レビュー

アトロシティー作者: 前川裕出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/02/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 受賞後第一作目。おぞましい暴力の偏在する世界を描いて、読者をイヤーな気分にさせるが、結末はミステリーとしてマトモに収斂する…

水生大海『熱望』(文藝春秋)レビュー

熱望作者: 水生大海出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 人生の転落譚という感じがしないのは、作者の鋭利な視点が、人間の欲得の交錯を剔抉しているからで、つまりは、(反)教養小説という枠組みを外してい…

深木章子『螺旋の底』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ 実際の話、(…)人間は昔から死者の遺骸の上に生者の生活を築いてきた。人々が笑顔で洗礼を受け、結婚式を挙げる教会というもの自体が、実は聖なる墓場なのだ。(p.27) 螺旋の底 (ミステリー・リーグ)作者: 深木章子出版社/メーカー: 原書房発…

三木笙子『竜の雨降る探偵社』(PHP研究所)レビュー

竜の雨降る探偵社作者: 三木笙子出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2013/02/22メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 1回この商品を含むブログ (5件) を見る 作者の透明感のある文体が奏功した感じ。本格ミステリ的には、「好条件の求人」が切れ味が…

道尾秀介『笑うハーレキン』(中央公論新社)レビュー

笑うハーレキン作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/01/09メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (16件) を見る ある種の屈託を、ホームレスという存在に仮託したが、いやらしさを感じさせずに、人生の袋小路と…

湊かなえ『望郷』(文藝春秋)レビュー

望郷作者: 湊かなえ出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/01/01メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (16件) を見る 推協賞受賞作「海の星」を収録したシリーズ短編集。受賞作収録の短編集は、併録している作品が小粒な出来だと見劣りして…

三津田信三『のぞきめ』(角川書店)レビュー

のぞきめ作者: 三津田信三出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/11/30メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (13件) を見る 作者の代表作への言及がちらっとあることから、読者は多少身構えるだろう。作者の物…

美輪和音『強欲な羊』(東京創元社)レビュー

強欲な羊 (ミステリ・フロンティア)作者: 美輪和音出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/11/21メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る イヤミスという売り方でいいのかしらん。ミステリーズ! 新人賞受賞作はギミック重視の結…

森福都『ご近所美術館』(東京創元社)レビュー

ご近所美術館 (創元クライム・クラブ)作者: 森福都出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/07/27メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (8件) を見る コージー系に分けられるのだろうけれども、各話バランスよくまとめられて、愉しめる。設…

宮部みゆき『ソロモンの偽証 第I部・第II部・第III部』(新潮社)レビュー

ソロモンの偽証 第I部 事件作者: 宮部みゆき出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/08/23メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 43回この商品を含むブログ (113件) を見るソロモンの偽証 第II部 決意作者: 宮部みゆき出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/09/2…