作者名マ行

道尾秀介『ノエル: a story of stories』(新潮社)レビュー

ノエル―a story of stories作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/09メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 8回この商品を含むブログ (23件) を見る 作者は新たに試行錯誤の時期に入ったのかな、と思う。この作品のモチーフはタイトルの通りだけ…

道尾秀介『光』(光文社)レビュー

光作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 光文社発売日: 2012/06/08メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 1回この商品を含むブログ (23件) を見る 作者のリリシズムの探求は、順調にいっているだろうか。本作は、懐旧の冒険譚で、少年時代にとりまいている…

湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』(集英社)レビュー

白ゆき姫殺人事件作者: 湊かなえ出版社/メーカー: 集英社発売日: 2012/07/26メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 39回この商品を含むブログ (30件) を見る インタビューと雑誌記事、ウェブテクストを重ねて、“物語”が生成し消滅するまでを描く。事件のディ…

森晶麿『黒猫の接吻あるいは最終講義』(早川書房)レビュー

黒猫の接吻あるいは最終講義作者: 森晶麿,丹地陽子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/05/24メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (10件) を見る 芸術に関する薀蓄が、歯切れのいい文体で語られるので、あまり苦にならない。小説全体はタ…

前川裕『クリーピー』(光文社)レビュー

日本ミステリー文学大賞新人賞 受賞作 クリーピー作者: 前川 裕出版社/メーカー: 光文社発売日: 2012/02/18メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 日ミス新人賞、二作受賞の一方は、サスペンス・ミステリーを追求した作品。筆運びの確かさで、安心して…

皆川博子『双頭のバビロン』(東京創元社)レビュー

双頭のバビロン作者: 皆川博子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/04/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 20回この商品を含むブログ (15件) を見る 作者の奔放な想像=創造力は、ゴシックスリラーを、大戦間のデカダンな空気と混交させ、さらにメ…

湊かなえ『サファイア』(角川春樹事務所)レビュー

サファイア作者: 湊かなえ出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2012/04/15メディア: ハードカバー クリック: 5回この商品を含むブログ (24件) を見る 宝石名をタイトルにそのまま採り上げた心理サスペンス系の短編集。ギミックを効かせたものとプロット…

三津田信三『幽女の如き怨むもの』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ ただ、夢を見る必要があったのです。女であるが故に、自分たちは女郎ではなく花魁なのだという幻想が、どうしても必要だったのです。(…)(p.263) 幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)作者: 三津田信三出版社/メーカー: 原書房発売日: 2…

水生大海『転校クラブ 人魚のいた夏』(原書房)レビュー

転校クラブ―人魚のいた夏作者: 水生大海出版社/メーカー: 原書房発売日: 2012/03メディア: 単行本 クリック: 30回この商品を含むブログ (10件) を見る まあフツーの青春ミステリかと思ったら、おおここまでやるか的な。なんとなく乱歩的テイストを採用してる…

深木章子『衣更月家の一族』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)こういう場合は、やみくもに行方を追うより、立ち回り先を当たる方が効果的なんだ。別人になり済ましたからといって、違う人間になったわけじゃないからね。(…)」(p.156) 衣更月家の一族 (ミステリー・リーグ)作者: 深木章子出版社/メ…

水生大海『夢玄館へようこそ』(双葉社)レビュー

夢玄館へようこそ作者: 水生大海出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2011/11/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (11件) を見る もしかしたら、作者はダメ人間を描くのが得意なのかも。癖のある、というのでもなく、悪意ある、というので…

森谷明子『望月のあと 覚書源氏物語『若菜』』(東京創元社)レビュー

望月のあと (覚書源氏物語『若菜』)作者: 森谷明子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/12/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (6件) を見る あまり間をおかずして、続篇の登場。つとめて平明な語り口は維持されて、とっつ…

松尾由美『煙とサクランボ』(光文社)レビュー

煙とサクランボ作者: 松尾由美出版社/メーカー: 光文社発売日: 2011/11/18メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 56回この商品を含むブログを見る 設定がこの作者らしい、と思って読み進めていると、クライマックスで、そういうことだったのか、と。幽…

湊かなえ『境遇』(双葉社)レビュー

境遇作者: 湊かなえ出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2011/10/05メディア: 単行本 クリック: 38回この商品を含むブログ (34件) を見る ドメスティック・スリラーの書き手として、着実に地歩を固めている作者だが、本作は、運命性と対峙する負荷が呼び込むサス…

三津田信三『生霊の如き重るもの』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「あいつは日本の各地方に伝わる怪異譚の蒐集を生き甲斐にしている奴で、(…)その話の全てを相手が喋り切ってしまうまで、絶対に諦めずに取り憑き続けるという悪癖を持つ、何とも恐ろしい奴なんだよ」(「顔無の如き攫うもの」p.311) 生霊の…

道尾秀介『水の柩』(講談社)レビュー

水の柩作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/10/27メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログを見る 力作、だと思うけれども。こういう路線だったら、もっと短編で読みたい、と思う。大藪賞の選評で、自分は子供の出てくる小説は苦…

森晶麿『黒猫の遊歩あるいは美学講義』(早川書房)レビュー

黒猫の遊歩あるいは美学講義作者: 森晶麿出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/10/21メディア: 単行本 クリック: 20回この商品を含むブログ (33件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル8 インプレッション8 トータル39 収…

丸山天寿『咸陽の闇』(講談社ノベルス)レビュー

咸陽の闇 (講談社ノベルス)作者: 丸山天寿出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/08/04メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見る 相変わらずの面白さ。謎の展開とその解明が、奇想の領域で結実する。それでリアリティを獲得しているの…

水生大海『善人マニア』(幻冬舎)レビュー

善人マニア作者: 水生大海出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2011/08/04メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る いいですね。何よりも、この物語にこういうタイトルをつけるのが。登場人物たちの運命に対する突き放し方が、“出来事”…

皆川博子『開かせていただき光栄です』(早川書房)レビュー

開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ・ミステリワールド)作者: 皆川博子,佳嶋出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/07/15メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 38回この商品を含むブログ (66件) を見る 歴史ミステリの巨匠が今回挑ん…

麻耶雄嵩『メルカトルかく語りき』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「さあね。創造するのは犯人の役目だ。私はそれを楽しみながら腑分けするのが趣味だからね」(「死人を起こす」p.42) メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/10メディア: 新書購入: 6…

門前典之『灰王家の怪人』(南雲堂)レビュー

本日のエピグラフ 「自由でいたいんだよな。誰からも縛られたくないし――」と、子供じみたことを何度も口にするだけだった。そんな彼がうらやましくもあり、また、彼のように自由でありたいと願った。(p.31) 灰王家の怪人 (本格ミステリー・ワールド・スペシ…

深木章子『鬼畜の家』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ (…)今考えれば、あたしは自分を意識的にコントロールしているつもりで、知らず知らずのうちに本当に病んでいたのだと思います。(p.128) 鬼畜の家 (a rose city fukuyama)作者: 深木章子出版社/メーカー: 原書房発売日: 2011/04/25メディア:…

望月諒子『大絵画展』(光文社)レビュー

大絵画展作者: 望月諒子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2011/02/19メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (4件) を見る 日ミス新人賞受賞作だが、すでにデビューしている作者だけあって、安定感のある書きっぷり。ただ、小説的な余裕が、巧緻…

三津田信三『七人の鬼ごっこ』(光文社)レビュー

七人の鬼ごっこ作者: 三津田信三出版社/メーカー: 光文社発売日: 2011/03/19メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (12件) を見る ホラー・サスペンスと探偵小説的興味の融合ということでは、間然するところなし、恐怖を煽るネタが、コケオド…

三木笙子『人形遣いの影盗み』(東京創元社)レビュー

人形遣いの影盗み (ミステリ・フロンティア)作者: 三木笙子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/02/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (14件) を見る シリーズ第三集。明治の捕物譚として端正な出来映えだと思う。だんだ…

湊かなえ『花の鎖』(文藝春秋)レビュー

花の鎖作者: 湊 かなえ出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/03/08メディア: 単行本 クリック: 24回この商品を含むブログ (51件) を見る 三人の視点人物を縒り合わせる結構に因果話を採用して、なかなかスリリングな心理サスペンスを構築して、人情譚とし…

森谷明子『白の祝宴 逸文紫式部日記 』(東京創元社)レビュー

白の祝宴 (逸文紫式部日記 )作者: 森谷明子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/03/24メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (11件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39…

道尾秀介『カササギたちの四季』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)その美味い温州蜜柑の実が、自分の幹や根は温州蜜柑じゃないなんて悩んでいたら、笑い飛ばしてやりたくなるとは思わんか?」(「―冬― 橘の寺」p.281) カササギたちの四季作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 光文社発売日: 2011/02/19メデ…

丸山天寿『琅邪の虎』(講談社ノベルス)レビュー

琅邪の虎 (講談社ノベルス)作者: 丸山天寿出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/12/07メディア: 新書 クリック: 7回この商品を含むブログ (9件) を見る 二作目も快調。因縁譚の印象が強いけれども、ネタの振り方やとぼけたユーモア、クライマックスの大活劇…