2015-01-01から1年間の記事一覧

鳥飼否宇『生け贄』 (講談社ノベルス)レビュー

生け贄 (講談社ノベルス)作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/03/05メディア: 新書この商品を含むブログ (3件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 動物生態学を伝奇ミステ…

門井慶喜『東京帝大叡古教授』(小学館)レビュー

東京帝大叡古教授作者: 門井慶喜出版社/メーカー: 小学館発売日: 2015/03/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 歴史ミステリだが、タイトルのあそびがあるだけに、衒学的趣向への関心が勝ってしまう。ただ、作者のスタンスは、こちらが思…

門前典之『首なし男と踊る生首』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ 死刑が絞首刑と変わったにもかかわらず、斬首を続け、しかも日本刀でなく、本来きこりが使う斧というものを用いて首を切り落とすとは、犯罪者とはいえ礼に失するというものだった。(p.31) 首なし男と踊る生首 (ミステリー・リーグ)作者: 門…

西澤保彦『さよならは明日の約束』(光文社)レビュー

さよならは明日の約束作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/03/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る こういう雰囲気のも書けちゃう。しかも、作者の持ち味である論理のアクロバットの強かさはいささかも失わ…

久住四季『星読島に星は流れた』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「それぞれが唯一無二。そして、この島を訪れて多くの情報をもたらしてくれる。わたしにとっては、皆さんこそが、“隕石”そのものなんです」(p.105) 星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)作者: 久住四季出版社/メーカー: 東京創元…

知念実希人『仮面病棟』 (実業之日本社文庫)レビュー

仮面病棟 (実業之日本社文庫)作者: 知念実希人出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2014/12/05メディア: 文庫この商品を含むブログ (106件) を見る まさかこの作者が文庫レーベルでどんどん作品を出すひとになるとは思わんかったですよ。レビューには上げ…

2015年5月版

『解剖迷宮』みたいな話には、基本的に弱いですよ。アメリカの埋もれた記憶をめぐる、尊厳回復のドラマは、ポンニチの中心で正義を叫ぶよりも、数段の迫真性がありますわな。『キラー』は青春小説とサスペンスがストレートに縒り合わさって、爽快な気分。い…

大倉崇裕『福家警部補の追及』(東京創元社)レビュー

福家警部補の追及 (創元クライム・クラブ)作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/04/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る シリーズ新作は中編二本だが、ドラマの起伏の興味を狙う作者の意識は、倒叙ミステリがマンネリを…

市井豊『人魚と金魚鉢』(東京創元社)レビュー

人魚と金魚鉢 (ミステリ・フロンティア)作者: 市井豊出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/02/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 シリ…

近藤史恵『岩窟姫』(徳間書店)レビュー

岩窟姫 (文芸書)作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2015/04/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 全く以て、タイトルがすべてを表している。復讐の念が籠った少女タレントの捜査行は、試行錯誤の危うさを抱えながらも、敵の…

村崎友『夕暮れ密室』(KADOKAWA)レビュー

夕暮れ密室作者: 村崎友,五十嵐大介出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/02/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 学園ミステリの“古典”といえば、現在の時点でいえば、やっぱり東野圭吾のデビュー作『放課後』になるのではない…

薬丸岳『誓約』(幻冬舎)レビュー

誓約作者: 薬丸岳出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/03/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 作者の前作は、ヒューマニスティックなドラマ構築への関心を十分に見せつけた作品だったけれども、作者がそういう方向性に単純に行ってしまっ…

麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』(新潮社)レビュー

あぶない叔父さん作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/04/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 二度目の本ミス大賞が決まった…

辻真先『にぎやかな落葉たち  21世紀はじめての密室』(光文社)レビュー

にぎやかな落葉たち 21世紀はじめての密室作者: 辻真先出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/02/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る PR文にある「日本一やんちゃな巨匠」っていうのがいい感じですね。作者としてみれば…

2015年4月版

フランスの新人さんの変速クライムノベルも愉しかったけれども、ここではドイツの新人さんのちょいエグコワいお話を推します。ツボだなあ、ホントにこういうの。ゴシック調の雰囲気を矯めようとするのが、逆に話を盛り上げるというか。メイの前作は、いい読…

中山七里『嗤う淑女』(実業之日本社)レビュー

嗤う淑女作者: 中山七里出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2015/01/31メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (9件) を見る 会心作を発表し続ける作者も、現代の悪女ものに挑戦した。読者としては当然ギミック重視で攻める、とあらかじめ…

真梨幸子『5人のジュンコ』(徳間書店)レビュー

5人のジュンコ作者: 真梨幸子出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2014/12/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 現代の悪女ものは、ミステリアスな存在性を印象付けるというより、アモルファスな悪意が醸し出す強烈さで勝負しているようだ。…

小島正樹『呪い殺しの村』(双葉社)レビュー

呪い殺しの村作者: 小島正樹出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2015/02/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル39 作者の講談社ノベルズのシリーズの…

叛乱のクロニクル

直木賞作家の船戸与一さん 死去 NHK 4月22日 15時17分 「砂のクロニクル」や「虹の谷の五月」などの冒険小説で知られる直木賞作家の船戸与一さんが22日未明、胸腺がんのため都内の病院で亡くなりました。71歳でした。船戸さんは山口県下関市出身で、…

岡本裕一朗『フランス現代思想史 - 構造主義からデリダ以後へ 』 (中公新書) レビュー

フランス現代思想史 - 構造主義からデリダ以後へ (中公新書)作者: 岡本裕一朗出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2015/01/23メディア: 新書この商品を含むブログ (24件) を見る 中公新書でフランクフルターの来歴を閲したと思ったら、今度はフランスの「…

道尾秀介『透明カメレオン』(KADOKAWA)レビュー

透明カメレオン作者: 道尾秀介出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/01/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 作者の作風を十全に展開した味があるが、実は新たな領域に歩を進めたような感じを持った。作者がミステリアスなもの…

2015年3月版

あれ、パレツキーの新作は、ファン以外にも訴求すると思うけれども、あんまり話題になってないなー。テーマは超重量級だぜ。アメリカにおける政治的なものと徹底的に対決する姿勢の猛々しさに拍手。フランシスも、息子の意地を見せて、親父のとは一線を画し…

河合莞爾『粗忽長屋の殺人(ひとごろし) 』(光文社)レビュー

粗忽長屋の殺人(ひとごろし)作者: 河合莞爾出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/02/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 作者の新境地、というより、手数を示してきた感があるが、こちらの期待した方向性とはやや違った。…

麻見和史『警視庁文書捜査官』(KADOKAWA)レビュー

警視庁文書捜査官作者: 麻見和史出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/01/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る なにやら意味ありげな部署に配属されたふたりの刑事が遭遇する奇怪な連続殺人。事件自体のトリッキーさに作者の持…

西川美和『永い言い訳』(文藝春秋)レビュー

永い言い訳作者: 西川美和出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/02/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (24件) を見る 読み応えはある。ただ、作者の近年の作品にも言えるけれども、小説構築の手法の探求が、技巧のレベルに留まっていて、かえってカ…

鳥飼否宇『絶望的 寄生クラブ』(原書房)レビュー

絶望的――寄生クラブ (ミステリー・リーグ)作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 原書房発売日: 2015/02/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る おあとがよろしい。という評価を得てほしいと願うが、いずれにせよ、作者入魂(!)のバカ作、いや力作…

藤田宜永『探偵・竹花  帰り来ぬ青春』(双葉社)レビュー

探偵・竹花 帰り来ぬ青春作者: 藤田宜永出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2015/01/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 今回の竹花は、ハイカラな香りがしてよいです。このシリーズは、ハードボイルドの様式美を追求する関心よりも、主人公…

村井俊治『地震は必ず予測できる! 』 (集英社新書) レビュー

地震は必ず予測できる! (集英社新書)作者: 村井俊治出版社/メーカー: 集英社発売日: 2015/01/16メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る いやあ、ここまで説得的だったとは。最初、著者の開発した地震「予測」の方法を週刊誌で見たとき、半信半疑だ…

角岡伸彦 西岡研介 ほか 『百田尚樹『殉愛』の真実 』 (宝島社)レビュー

百田尚樹『殉愛』の真実作者: 角岡伸彦,西岡研介,家鋪渡,宝島「殉愛騒動」取材班出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2015/02/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る 読んだ読んだ。まあ、近年稀に見るスキャンダル・ノンフィクションだろうね。…

柳広司『ラスト・ワルツ』(KADOKAWA)レビュー

ラスト・ワルツ作者: 柳広司出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/01/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る シリーズ待望の新作。このシリーズは、それこそ連城三紀彦の花葬シリーズの閾に近づいているのではないか。作者の追求…