2012-01-01から1年間の記事一覧

島田荘司『アルカトラズ幻想』(文藝春秋)レビュー

アルカトラズ幻想作者: 島田荘司出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/09メディア: 単行本 クリック: 77回この商品を含むブログ (13件) を見る 『追憶のカシュガル』を読んだときには、肯定的な意味で、この作者らしい枯れ方だと思ったものだが、本書を読…

高橋源一郎『非常時のことば 震災の後で』(朝日新聞出版)レビュー

非常時のことば 震災の後で作者: 高橋源一郎出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2012/08/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (11件) を見る 文学者、小説家としての著者のリアクション。焦点は、コミュニケーションの根底に…

石持浅海『煽動者』(実業之日本社)レビュー

本日のエピグラフ (…)僕たちはテロリストだ。けれど、決して人を殺さないテロリストなのだ。信念で殺人を犯す人間ほど、始末に負えない奴はいない。(…)(p.267) 煽動者作者: 石持浅海出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2012/09/20メディア: 単行本 クリッ…

道尾秀介『ノエル: a story of stories』(新潮社)レビュー

ノエル―a story of stories作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/09メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 8回この商品を含むブログ (23件) を見る 作者は新たに試行錯誤の時期に入ったのかな、と思う。この作品のモチーフはタイトルの通りだけ…

松尾匡『新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか』(講談社現代新書)レビュー

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)作者: 松尾匡出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/07/18メディア: 新書購入: 4人 クリック: 61回この商品を含むブログ (30件) を見る 説きがたり左翼運動史批判的入門。抽象的理論を振りかざし…

秋梨惟喬『天空の少年探偵団』(創元推理文庫)レビュー

天空の少年探偵団 (創元推理文庫)作者: 秋梨惟喬出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/08/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (6件) を見る シリーズ第二弾は長編で、物理的な大技を投入。それよりも、ジュブナイルとは微妙に一線を引いた内容が、創…

福田和代『ZONE 豊洲署刑事・岩倉梓』(角川春樹事務所)レビュー

ZONE 豊洲署刑事・岩倉梓作者: 福田和代,小林系(こばやし・けい)出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2012/08/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 36回この商品を含むブログ (8件) を見る 前作の近未来ものは、ワタクシ的にはウーンと唸ってしまった…

斎藤環『原発依存の精神構造: 日本人はなぜ原子力が「好き」なのか 』(新潮社)レビュー

原発依存の精神構造―日本人はなぜ原子力が「好き」なのか作者: 斎藤環出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (8件) を見る 「3・11」批評の中では、出色の作品。まず、著者の放射能危機に…

貫井徳郎『微笑む人』(実業之日本社)レビュー

微笑む人作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2012/08/18メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (28件) を見る ある事件が起こったとき、なぜその背後の“物語”が希求されるのだろうか。ある異常事が起こり、それがこちら側の…

深谷忠記『共犯』(徳間書店)レビュー

共犯作者: 深谷忠記出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2012/08/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 前作はミステリ色を薄めた社会派路線だったけれども、本作では、再びサスペンスを強く打ち出した会心作。反復された幼女誘拐事件に仕掛け…

2012年9月版

『ダークサイド』は、サイコスリラーだけれども、話の膨らませ方が上手い。日本人作家だと、まだこういかないんだよね。デュレンマットのは、初訳のよりも、改訳作品のほうがとっつきがいい。政治的なるものをめぐる寓話。政治、といえば『鷲たちの盟約』で…

大門剛明『レアケース』(PHP研究所)レビュー

レアケース作者: 大門剛明出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2012/08/07メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログを見る 生活保護行政の実態を題材に、「ねずみ小僧」というガジェットを大胆にとり入れた。ミステリ的プロットは、「ねずみ小僧」…

伊岡瞬『桜の咲かない季節』(講談社)レビュー

桜の咲かない季節作者: 伊岡瞬出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/08/21メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 1回この商品を含むブログを見る ミステリーを外したところに、女占い師の霊感を持ってくる。超越性を大胆に物語空間内に導入するけれど…

山口雅也『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)』(早川書房)レビュー

謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル) (ミステリ・ワールド)作者: 山口雅也出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/08/24メディア: 単行本 クリック: 21回この商品を含むブログ (13件) を見る いかにもこの作者らしい凝りようを堪能できる。謎々と書…

本城雅人『球界消滅』(文藝春秋)レビュー

球界消滅作者: 本城雅人出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/07メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (3件) を見る さらば、日本野球――ということで、来るべき(?)日本球界のメジャー編入による解体・再編劇を大胆にシュミレートして、大…

佐々木譲『回廊封鎖』(集英社)レビュー

回廊封鎖作者: 佐々木譲出版社/メーカー: 集英社発売日: 2012/08/03メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (6件) を見る 復讐小説として、実行者たちを社会的敗者に設定して、香港から勝者としての資本家がやってくる。物語的訴求性を持たせる…

伊園旬『週末のセッション』(東京創元社)レビュー

週末のセッション (ミステリ・フロンティア)作者: 伊園旬出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/06/28メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログを見る コンゲーム小説とは一線を画した、犯罪喜劇。四人の役者たちの必死さと哀れさを演出するの…

東野圭吾『虚像の道化師 ガリレオ7』(文藝春秋)レビュー

虚像の道化師 ガリレオ 7作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/08/10メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリック: 43回この商品を含むブログ (61件) を見る 風格だね。いささかも気が緩んでいない。後半二編が本格度が高いけれども、二つ目…

麻生荘太郎『少年探偵とドルイッドの密室』(南雲堂) レビュー

少年探偵とドルイッドの密室 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)作者: 麻生荘太郎出版社/メーカー: 南雲堂発売日: 2012/07/30メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログを見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル8 イ…

竹本健治『かくも水深き不在』(新潮社)レビュー

かくも水深き不在作者: 竹本健治出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログを見る 連城三紀彦の某名短編のテーマを、作者が料理し直してみたら、こんな感じになる。恐怖と狂気の感触を、じわじわ…

津原泰水『猫ノ眼時計 (幽明志怪) 』(筑摩書房)レビュー

猫ノ眼時計 (幽明志怪)作者: 津原泰水出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/07/01メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (12件) を見る んん、シリーズが終わるのか。ひとを食った要素が、前作と比べて大きいような気がする。飄々とした文体…

伊坂幸太郎『夜の国のクーパー』(東京創元社)レビュー

夜の国のクーパー作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/05/30メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (52件) を見る 作者が政治的なるものにアプローチして、だんだんと宮沢賢治に接近しているような。でも、世…

乾くるみ『カラット探偵事務所の事件簿 2 』(PHP文芸文庫) レビュー

カラット探偵事務所の事件簿 2 (PHP文芸文庫)作者: 乾くるみ出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2012/07/17メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (15件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレ…

保科昌彦『名探偵になりたくて (若槻調査事務所の事件ファイル) 』(東京創元社)レビュー

名探偵になりたくて (若槻調査事務所の事件ファイル) (ミステリ・フロンティア)作者: 保科昌彦出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/04/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 二年以上ぶりの続編は、主人公を違えての登場。軽ハードボイ…

2012年8月版

『サファリ』は、南アフリカのミクロコスモスを覗く興味が大だけれども、定石的な展開がダレないのがいい。PR文の強気ぶりがわかる。ローザンのは邦題がいい感じ。得体のしれない敵に振り回されるポジションからの逆襲ぶりにサスペンスの焦点が絞られる。…

香納諒一『女警察署長 K・S・P 』(徳間書店)レビュー

女警察署長 K・S・P作者: 香納諒一出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2012/07/12メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (1件) を見る このシリーズって、サーガだったのね、と改めて思い至る。K・S・Pと中国マフィアの再びの対決に、いわくあ…

遠藤武文『天命の扉』(角川書店)レビュー

天命の扉作者: 遠藤武文出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/07/28メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る 県議会の議場で起きた密室の狙撃事件に、有名寺院の本尊の正体がからみ、意外な方向へ話…

首藤瓜於『大幽霊烏賊 名探偵面鏡真澄』(講談社)レビュー

大幽霊烏賊 名探偵面鏡真澄作者: 首藤瓜於出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/06/28メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (8件) を見る この作者の前作の警察小説は、ワタクシ的にはダメでした。で、本作はド探偵小説なワケですが、とって…

川瀬七緒『147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官』(講談社)レビュー

147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官作者: 川瀬七緒出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/07/18メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (15件) を見る デビュー作とは方向性を違えた作品だけれども、快調。キャッチーなスペシャリストものの醍醐…

高野史緒『カラマーゾフの妹』(講談社)レビュー

カラマーゾフの妹作者: 高野史緒出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/08/02メディア: ハードカバー購入: 2人 クリック: 39回この商品を含むブログ (53件) を見る 今年の乱歩賞は、風格で勝ち取った感じ。名作の続編パロディだけれども、19世紀末の革命前…