2007-01-01から1年間の記事一覧

島田荘司『リベルタスの寓話』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ 中立者の行動は、厳密に物的な証拠と、論の冷静な合理性に裏打ちされていなくてはならない。どの国へのひいきでもなく。それこそが、自由へのメッセージだ(「リベルタスの寓話」P158より) リベルタスの寓話作者: 島田荘司出版社/メーカ…

乾ルカ『夏光』(文藝春秋)レビュー 

夏光作者: 乾ルカ出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/09/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 17回この商品を含むブログ (19件) を見る 有力なホラー小説の書き手がまたひとり。グロテスクな設定の物語に、カタルシスをきっちり与える手際は、安定し…

真瀬もと『キューピッドの涙盗難事件』(理論社)レビュー

本日のエピグラフ 「闇は美しいものですわよ、ホームズさん。無粋な真相よりもずっとね」(P390より) キューピッドの涙盗難事件―ベイカー街(ストリート)少年探偵団(イレギュラーズ)ジャーナル〈1〉 (ミステリーYA!)作者: 真瀬もと出版社/メーカー: 理論社…

朱川湊人『いっぺんさん』(実業之日本社)レビュー

いっぺんさん作者: 朱川湊人出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2007/08/17メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (24件) を見る 作者の独壇場。生理的な恐怖と哀切な雰囲気が、渾然となって、郷愁を醸しだす。バナキュラーな意識を物語に…

山田正紀『白の協奏曲』(双葉社)レビュー

白の協奏曲(コンチェルト)作者: 山田正紀出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2007/09メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (10件) を見る 時代背景が出てる出てる。刊行前に、どこまで手直ししたかどうかわからないけれど、ナラティブのレベルで…

笹本稜平『越境捜査』(双葉社) レビュー

越境捜査作者: 笹本稜平出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (16件) を見る 日本の警察小説における“仁義なき闘い”の設定、警視庁vs神奈川県警モノの新境地です。カネは天下の回り者、というか天下の…

荻原浩『サニーサイドエッグ』(東京創元社)レビュー

サニーサイドエッグ (創元クライム・クラブ)作者: 荻原浩出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (24件) を見る 長尺の話だけれども、軽ハードボイルド調を一切崩さないで間を持たせる力量は、さす…

滝田務雄『田舎の刑事の趣味とお仕事』(東京創元社)レビュー

田舎の刑事の趣味とお仕事 (ミステリ・フロンティア)作者: 滝田務雄出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (27件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッ…

石持浅海『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社)レビュー

Rのつく月には気をつけよう作者: 石持浅海出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2007/09メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 21回この商品を含むブログ (83件) を見る ミステリアス7 アクロバット8 サスペンス6 アレゴリカル8 インプレッション8 トータル3…

三咲光郎『砲台島』(早川書房)レビュー

砲台島 (ハヤカワ・ミステリワールド)作者: 三咲光郎出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/04メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (8件) を見る という極限状況下でのPI小説。“公的なるもの”が、“私的なるもの”を破壊し、収奪していくリ…

古処誠二『敵影』(新潮社)レビュー

敵影作者: 古処誠二出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/07/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (22件) を見る における罪と罰という問題性を、“恥”という日本的意識に交錯させるというモチーフは、さらに深化している。この延長線上に…

島本理生『あなたの呼吸が止まるまで』(新潮社)レビュー

あなたの呼吸が止まるまで作者: 島本理生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 26回この商品を含むブログ (83件) を見る “秘密”の共有をめぐる物語。というか、プライベートの領域をどう変成=編成させるかで、純粋な…

有田哲文 畑中徹『ゆうちょ銀行 民営郵政の罪と罰』(東洋経済新報社)レビュー

ゆうちょ銀行作者: 有田哲文/畑中徹出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2007/09/07メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 39回この商品を含むブログ (5件) を見る 2005年の「郵政選挙」のとき、「八年以内に残高を半減させる」という郵政リス…

小林敏明『廣松渉――近代の超克』(講談社)レビュー

廣松渉-近代の超克 (再発見 日本の哲学)作者: 小林敏明出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/06/21メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (23件) を見る これはもう、タイトルがすべてを物語っています。廣松思想そのものを語ってい…

近藤史恵『サクリファイス』(新潮社)レビュー

本日のエピグラフ もう勝つことは怖くない。ぼくの勝利はぼくだけのものではない。その尊さを僕は知っている。(P245より) サクリファイス作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/08メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 139回この商品を含む…

歌野晶午『ハッピーエンドにさよならを』(角川書店)レビュー

本日のエピグラフ しかし、一度出てしまった目は変えようがない。(中略)/問題は、過去ではなく未来だ。(「おねえちゃん」P40より) ハッピーエンドにさよならを作者: 歌野晶午出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2007/09メディア: 単行本購入: 2人 クリッ…

大崎梢『片耳うさぎ』(光文社)レビュー

片耳うさぎ作者: 大崎梢出版社/メーカー: 光文社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 22回この商品を含むブログ (43件) を見る ミステリアス8 アクロバット7 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル37 表紙絵が物語の内質をす…

東谷暁『ビジネス法則の落とし穴』(学研新書)レビュー

ビジネス法則の落とし穴 (学研新書)作者: 東谷暁出版社/メーカー: 学習研究社発売日: 2007/07メディア: 新書購入: 2人 クリック: 1回この商品を含むブログ (11件) を見る アベさんがああいうことになってから、「人はえらくなるほどどんどん無能になる」とい…

高橋克彦『完四郎広目手控 文明怪化』(集英社)レビュー

本日のエピグラフ 今の日本はこの前見た幻燈の絵のようなもの。(中略)中が空洞であっても、腐っていたとしても見た目には分からない。それを切って中身を見せてこそ幻燈の国ではなくなる。(「第十二話 幻燈国家」P311より) 文明怪化―完四郎広目手控作者:…

道尾秀介『ソロモンの犬』(文藝春秋)レビュー

ソロモンの犬作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/08/01メディア: 単行本 クリック: 12回この商品を含むブログ (87件) を見る ミステリアス7 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル37 青春ミステリと…

愛川晶『道具屋殺人事件』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ (前略)編集の妙とでもいうのかなあ、必要に応じて、長い噺をはしょることもできるし、短い噺をめんだい(、、、、)にもできる。(「勘定板の亀吉」P294より) 道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳 [ミステリー・リーグ]作者: 愛川晶,解…

北村薫『1950年のバックトス』(新潮社)レビュー

1950年のバックトス作者: 北村薫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 28回この商品を含むブログ (48件) を見る 短編&掌編小説集。「秋」や「手を冷やす」は、掌編というより、ほとんど散文詩の域に達している。“日…

飯尾潤『日本の統治構造』(中公新書)レビュー

日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)作者: 飯尾潤出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2007/07/01メディア: 新書購入: 15人 クリック: 202回この商品を含むブログ (148件) を見る 日本政治の流動化は避けられない状況下であればこそ、い…

曽根圭介『沈底魚』(講談社)レビュー

沈底魚作者: 曽根圭介出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/08/10メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (24件) を見る 時局柄、あてこすりや皮肉などは、味わいが出てる出てる。事件の構図は、シンプルに収斂するけれども、そこが物足りない…

秋梨惟喬『もろこし銀侠伝』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「(前略)“勢”は見えてきた。あとは細かい部分の辻褄が合えばいいんだ」(P244より) もろこし銀侠伝 (ミステリ・フロンティア)作者: 秋梨惟喬出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブ…

石崎幸二『首鳴き鬼の島』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 親子鑑定の場合、絶対違う、と判断するほうが簡単です。ひとつでも違えば親子ではないわけですから。(P158〜159より) 首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)作者: 石崎幸二出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/08メディア: 単…

米澤穂信『インシテミル』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ 「(前略)このをデザインしたやつ、です。そこの人間は、少なくとも空気の読めないミステリ読みです」(P379より) インシテミル作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/08メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 598回この商…

上杉隆『官邸崩壊』(新潮社)レビュー

官邸崩壊 安倍政権迷走の一年作者: 上杉隆出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/08/23メディア: ハードカバー購入: 9人 クリック: 202回この商品を含むブログ (105件) を見る ちゅうことで、『官邸崩壊』刊行直後に、政権崩壊してしまったワケです。南無阿弥…

伊藤計劃 『虐殺器官』(早川書房)レビュー

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)作者: 伊藤計劃出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/06メディア: 単行本購入: 26人 クリック: 817回この商品を含むブログ (326件) を見る “戦争器械”でなくて、「虐殺器官」なのね。対テロ体制下で、殺戮地…

深谷忠記『傷』(徳間書店)レビュー

本日のエピグラフ いずれにせよ、それは他人に負わされた傷ではない。(中略)責任は自分にある。だから、辛くても苦しくても自分でその痛みを引き受けて生きていかなければならない。(P329より) 傷作者: 深谷忠記出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2007/0…