2008-01-01から1年間の記事一覧

曽根圭介『あげくの果て』(角川書店)レビュー

あげくの果て作者: 曽根圭介出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2008/10/25メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 11回この商品を含むブログ (22件) を見る 表題作は完全に筒井康隆『銀齢の果て』への返歌ですね。「最後の言い訳」のグロテ…

長岡弘樹『傍聞き』(双葉社)レビュー

傍聞き作者: 長岡弘樹出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2008/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (44件) を見る 冒頭の一編は更生保護施設長だが、それも含め、セキュリティにかかわる職に奉ずる者たちの特別な事件を描いた佳品…

辻村深月『ロードムービー』(講談社)レビュー

ロードムービー作者: 辻村深月出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/10/24メディア: 単行本 クリック: 18回この商品を含むブログ (69件) を見る 完全に児童文学・ヤングアダルト系のもの。子どもや若年世代の心理の繊細なところを描くのは、自家薬籠中のもの…

古川日出男『聖家族』(集英社)レビュー

聖家族作者: 古川日出男出版社/メーカー: 集英社発売日: 2008/09/26メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 68回この商品を含むブログ (213件) を見る 近世近代現代現在。空間(地理)的、時間(系譜)的、ふたつの次元を交錯・攪乱させて、ありえない/ありうべき…

三浦俊彦『戦争論理学 あの原爆投下を考える62問』(二見書房)レビュー 

戦争論理学 あの原爆投下を考える62問作者: 三浦俊彦出版社/メーカー: 二見書房発売日: 2008/09/01メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 4人 クリック: 34回この商品を含むブログ (23件) を見る 加藤尚武が対テロ戦争中(って、今もか)に『戦争倫理学』を世…

東野圭吾『ガリレオの苦悩』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ 「君はまだ科学というものがわかってないな」/(…)/「神秘的なものを否定するのが科学の目的じゃない。(…)」(「第四章 指標す」P240より) ガリレオの苦悩作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/10/23メディア: 単行本…

東野圭吾『聖女の救済』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ 「だけど僕は科学者だからね。心理的に不自然な説と物理的に不可能な説では、どっちを選ぶかと訊かれれば、多少抵抗はあっても前者を選ばざるをえない。(…)」(P196より) 聖女の救済作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 200…

麻見和史『真夜中のタランテラ』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「再生はあきらめて、機械に置き換えるということですか。それはつまり、義手や義足と同じ発想ですね? (…)」(P197より) 真夜中のタランテラ (ミステリ・フロンティア)作者: 麻見和史出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/10メディ…

乾くるみ『カラット探偵事務所の事件簿?』(PHP)レビュー

カラット探偵事務所の事件簿 1作者: 乾くるみ出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2008/09/13メディア: ハードカバー クリック: 4回この商品を含むブログ (36件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス6 アレゴリカル7 インプレッション8 トー…

大沢在昌『黒の狩人 上・下』(幻冬舎)レビュー

黒の狩人〈上〉作者: 大沢在昌出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2008/09/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (18件) を見る黒の狩人 下 (2)作者: 大沢在昌出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2008/09メディア: 単行本 クリック: 2回この商品…

倉阪鬼一郎『湘南ランナーズ・ハイ』(出版芸術社)レビュー

湘南ランナーズ・ハイ作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 出版芸術社発売日: 2007/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 21回この商品を含むブログ (9件) を見る 作者のマラソンものの二作目。個人的にこういうお話には、弱いのです。走る、というプリミ…

三木笙子『人魚は空に還る』(東京創元社)レビュー

人魚は空に還る (ミステリ・フロンティア)作者: 三木笙子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/08メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (24件) を見る いい雰囲気。筆致が地に足が着いているもので、安心して小説世界に身を委ねられる。…

田中啓文『辛い飴 永見緋太郎の事件簿』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)でたらめ、でたらめ、でたらめだから楽しいんだ。ただ……音楽にさえなってりゃそれでいいんだ。でたらめ万歳だ」(「甘い土」P173より) 辛い飴―永見緋太郎の事件簿 (創元クライム・クラブ)作者: 田中啓文出版社/メーカー: 東京創元…

神曲崩壊…………

「過ち犯した」グリーンスパン氏認める 「マエストロ」の面影なく 10月24日19時35分配信 産経新聞 【ワシントン=渡辺浩生】巧みな金融政策のかじ取りから「マエストロ」(巨匠)の異名をもとったグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長が、低…

新津きよみ『トライアングル』(角川書店)レビュー

トライアングル作者: 新津きよみ出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2008/09/25メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (25件) を見る 謎の設定の仕方がうまい。回想の殺人と、家庭の悲劇の二大定番テーマを絶妙に組み合わせ…

有栖川有栖『有栖川有栖の鉄道ミステリー旅』(山と渓谷社)レビュー

有栖川有栖の鉄道ミステリー旅作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: 山と溪谷社発売日: 2008/08/25メディア: 大型本この商品を含むブログ (13件) を見る 「乗りテツ」を自認する著者の紀行エッセー集+鉄ミスガイド付。著者の青春時代の回想記にもなっていて、…

北森鴻『虚栄の肖像』(文藝春秋)レビュー

虚栄の肖像作者: 北森鴻出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/09メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (7件) を見る 『深淵のガランス』に続くシリーズ第二弾だけれども、ますますハードボイルドに傾斜している。が、ミステリとしての結構…

深水黎一郎『トスカの接吻』(講談社ノベルズ)レビュー

トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ (講談社ノベルス)作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/08/07メディア: 新書購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (26件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル8 …

谺健二『肺魚楼の夜』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)阪神大震災で人生が変わって、それから九年間、被災者のために夢中で走ってきたけど、震災当時は自覚のなかった心の痛みが、ここへ来てボディブローのように効いてきた、とでもいうのですかね。(…)」(P61より) 肺魚楼の夜作者: 谺…

有栖川有栖『火村英生に捧げる犯罪』(文藝春秋)レビュー

火村英生に捧げる犯罪作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/09/25メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (77件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル…

石持浅海『ガーディアン』(光文社カッパノベルス)レビュー

ガーディアン (カッパ・ノベルス)作者: 石持浅海出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/08/21メディア: 新書購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (49件) を見る 同一の設定から、パズルとサバイバル、二つの物語を織り上げた。作者の知的強度を見せ…

不知火京介『ただいま』(光文社)レビュー

ただいま作者: 不知火京介出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/09/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 推理小説年鑑に収録された「あなたに会いたくて」が面白かったので繙いたけれども、総体として、“記憶”を介した人と人との出会いを描…

柄刀一『ペガサスと一角獣薬局』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「伝説のユニコーンは、人を選んだり、判定を下したりするだろう。(…)でも、このシャルウッドの森のユニコーンは、神様の創造物には違いないけど、たぶん、人と自然のかかわりの間で生まれた生き物なのさ。だから、人を探るような力は持っ…

泡坂妻夫『織姫かえる』(文藝春秋)レビュー

織姫かえる―宝引の辰 捕者帳作者: 泡坂妻夫出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/08メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る 捕物帳における江戸情緒、というよりも、会話文におけるとぼけ具合、絶妙な間合いの取り方は、余人の…

香納諒一『血の冠』(祥伝社)レビュー

血の冠作者: 香納諒一出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2008/07/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る 今現在、単発でハードボイルド作品書くのも、結構大変なことだと思う。主人公の魂の道程を、ひとつの“物語”の内に封じ込めて訴求力を持…

中島岳志 西部邁『パール判決を問い直す』(講談社現代新書)レビュー

パール判決を問い直す「日本無罪論」の真相 (講談社現代新書)作者: 中島岳志,西部邁出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/07/18メディア: 新書購入: 3人 クリック: 83回この商品を含むブログ (16件) を見る 小林よしのりの中島岳志『パール判事』批判をきっ…

大村友貴美『死墓島の殺人』(角川書店)レビュー

死墓島の殺人作者: 大村友貴美出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2008/08/29メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (12件) を見る ミステリアス7 アクロバット7 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル…

太田忠司『誰が疑問符を付けたか?』(幻冬舎)レビュー

誰が疑問符を付けたか?作者: 太田忠司出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2008/07/01メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (9件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル37 シリーズ…

二階堂黎人『鬼蟻村マジック』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ 「醸造アルコール入りの安酒なんて、本物の日本酒じゃありませんよ。ちゃんとしたものを、わざわざ純米酒>なんて謳うことの方が変なんです」(P70より) 鬼蟻村マジック (ミステリー・リーグ)作者: 二階堂黎人出版社/メーカー: 原書房発売…

折原一『クラスルーム』(理論社)レビュー

クラスルーム (ミステリーYA!)作者: 折原一出版社/メーカー: 理論社発売日: 2008/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (12件) を見る 作者のもつ毒を、ヤングアダルト世代に触れさせるのは、結構正しいことなのかも。学校という…