2010-01-01から1年間の記事一覧

倉阪鬼一郎『薔薇の家、晩夏の夢』(東京創元社)レビュー

薔薇の家、晩夏の夢 (創元クライム・クラブ)作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2010/06/24メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の言葉の魔術師ぶりを、堪能できる――かどうかは、読んでのお楽しみ。ゴシ…

水生大海『かいぶつのまち』(原書房)レビュー

かいぶつのまち作者: 水生大海出版社/メーカー: 原書房発売日: 2010/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (11件) を見る ミステリアス8 アクロバット7 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 近年いか…

東野圭吾『プラチナデータ』(幻冬舎)レビュー

プラチナデータ作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2010/07/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 123回この商品を含むブログ (84件) を見る あれ、PR文とは、かなり違った印象が……。物語自体は、古典的な図式に収まっているけれども、サスペ…

大門剛明『確信犯』(角川書店)レビュー

確信犯作者: 大門剛明出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/07/31メディア: 単行本 クリック: 25回この商品を含むブログ (3件) を見る 現在の司法制度の死角を突くことを目論んだ社会派作品だけれども、全体の構図が明らかに…

京極夏彦『西巷説百物語』(角川書店)レビュー

西巷説百物語 (怪BOOKS)作者: 京極 夏彦出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/07/24メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 22回この商品を含むブログ (60件) を見る 堂々とした語りっぷり。シリーズ前作よりも、よりナラティブ…

奥泉光『シューマンの指』(講談社)レビュー

シューマンの指 (100周年書き下ろし)作者: 奥泉光出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/23メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 206回この商品を含むブログ (106件) を見る 音楽にはもーまったく疎いワタクシめには、作者がある種の観念的手触りを、言葉…

斉藤貴男『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)

消費税のカラクリ (講談社現代新書)作者: 斎藤貴男出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/16メディア: 新書購入: 21人 クリック: 1,282回この商品を含むブログ (34件) を見る サラリーマン税制批判の急先鋒だった著者の怒りのリアルバウト。民主主義におけ…

守屋武昌『「普天間」交渉秘録』(新潮社)レビュー

「普天間」交渉秘録作者: 守屋武昌出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/07/09メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 93回この商品を含むブログ (30件) を見る 著者の語るストーリーは、沖縄の地域振興利権屋が、アメリカと自民党国防族周辺をたらしこんで、…

深谷忠記『評決』(徳間書店)レビュー

評決作者: 深谷忠記出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2010/07/16メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (3件) を見る 地味な序盤の展開におそるおそるページを繰っていると、いきなり背負い投げ。そのあとも、シリアスな空気を維持しつつ、こ…

小路幸也『僕は長い昼と長い夜を過ごす』(早川書房)レビュー

僕は長い昼と長い夜を過ごす (ハヤカワ・ミステリワールド)作者: 小路幸也出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2010/06/24メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (17件) を見る 泥臭くなる話を、物語の設定と語り口で軽妙に仕立て上げたのは作者…

滝田務雄 『長弓戯画 (うさ・かめ事件簿) 』(東京創元社)レビュー

長弓戯画 (うさ・かめ事件簿) (ミステリ・フロンティア)作者: 滝田務雄出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2010/06/29メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (11件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 イン…

服部真澄『KATANA カタナ』(角川書店)レビュー

KATANA カタナ作者: 服部真澄出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/06/26メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (3件) を見る 近未来小説だけれども、先端技術と政治の共犯関係についての真摯な模索がテ…

石川康宏  内田 樹『若者よ、マルクスを読もう』(河出書房新社)レビュー

若者よ、マルクスを読もう (20歳代の模索と情熱)作者: 内田樹,石川康宏出版社/メーカー: かもがわ出版発売日: 2010/06/18メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 65回この商品を含むブログ (30件) を見る マルクスは、入門書に恵まれない思想家だよなあ、と常…

島田荘司『写楽 閉じた国の幻』(新潮社)レビュー

写楽 閉じた国の幻作者: 島田荘司出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/06メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 57回この商品を含むブログ (38件) を見る 諸説の死角を突いて、逆説というより正調かつシンプルなロジックで、寛政年間に立ち現れた幻の正体を…

有栖川有栖『闇の喇叭』(理論社)レビュー

本日のエピグラフ 『ああ、そうか。ということは、怒りの日というのは人間の後ろめたさを歌っているんだ。それならわかる』(P114より) 闇の喇叭 (ミステリーYA!)作者: 有栖川有栖,佳嶋出版社/メーカー: 理論社発売日: 2010/06/21メディア: 単行本購入: 1…

門井慶喜『血統(ペディグリー)』(文藝春秋)レビュー

血統(ペディグリー)作者: 門井慶喜出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2010/06/01メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る 物語の設定の妙味。テーマは題名に刻印されている通りだけれども、それにしても、日本画家の末裔とアングラ…

幕内秀夫『子どもが野菜嫌いで何が悪い! 』 (バジリコ)レビュー

子どもが野菜嫌いで何が悪い!作者: 幕内秀夫出版社/メーカー: バジリコ発売日: 2010/03/19メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 41回この商品を含むブログ (4件) を見る いいですね、100%の反栄養学。基本的に支持します。子どもが野菜…

伯方雪日『死闘館  我が血を嗣ぐもの』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)そのマナを持つに値しない人の体に流れこんだマナは、その人を傷つけ、殺すことにもなるだろう」(P118より) 死闘館 (我が血を嗣ぐもの) (ミステリ・フロンティア)作者: 伯方雪日出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2010/06/29メ…

乾くるみ『スリープ』(角川春樹事務所)レビュー

スリープ作者: 乾くるみ出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2010/07/01メディア: 単行本 クリック: 44回この商品を含むブログ (35件) を見る 『夏への扉』が露骨なミスディレクションだけれども、思ってみれば、タイトルがもっとそうでございました。サ…

麻耶雄嵩『貴族探偵』(集英社)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)私の頭脳はそこにいる三人ですよ。彼らは私の所有物である以上、推理などといった下らないことは、彼らにやらせておけばいいのです」(「春の声」P291より) 貴族探偵作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/05/26メデ…

湊かなえ『夜行観覧車』(双葉社)レビュー

夜行観覧車作者: 湊かなえ出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2010/06/02メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 162回この商品を含むブログ (114件) を見る おお、ちょっと澄ましたドメスティック・スリラーには終わらせまいとする作者の踏ん張りどころが、後半…

貫井徳郎『明日の空』(集英社)レビュー

明日の空作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/05/26メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (24件) を見る 仕掛けが、あざとさを感じさせない。重量感のある諸作を物してきた作者の新作としては軽量級だけれども、持ち重りはし…

石持浅海『この国。』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ この国のどこが不満だ?/(…)これほど成功した国は、他にない。それなのに、なぜ体制を覆そうとする? 一党独裁の、何が悪いのか。(「エクスプレッシング・ゲーム」P292より) この国。 (ミステリー・リーグ)作者: 石持浅海出版社/メー…

米澤穂信『ふたりの距離の概算』(角川書店)レビュー

ふたりの距離の概算作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/06/26メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 134回この商品を含むブログ (129件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル8 …

近藤史恵『薔薇を拒む』(講談社)レビュー

薔薇を拒む作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/05/27メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 6回この商品を含むブログ (30件) を見る 作者の美意識が前面に出た、久しぶりの心理サスペンス。ゴシック調の設定を違和感なく使いこなして…

柳広司『キング&クイーン』(講談社)レビュー

キング&クイーン (100周年書き下ろし)作者: 柳広司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/05/26メディア: 単行本 クリック: 35回この商品を含むブログ (30件) を見る ストレートなサスペンス。でも、ギミックがメインだったのかなあ。小説が上手いだけに、お…

2010年上半期本格ミステリベスト5

2009年11月〜2010年4月のベストですが、今回は看板に偽りあり。また、下半期だのみかしらん。 水魑の如き沈むもの (ミステリー・リーグ)作者: 三津田信三出版社/メーカー: 原書房発売日: 2009/12/07メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 91回この商品を含む…

高橋源一郎『「悪」と戦う』(河出書房新社)レビュー

「悪」と戦う作者: 高橋源一郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/05/17メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 107回この商品を含むブログ (101件) を見る 「悪」と戦うのは、何かを守るため。しかし「悪」と戦うときには、代償を支払わなければなら…

田中慎弥『実験』(新潮社)レビュー

実験作者: 田中慎弥出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/05メディア: 単行本 クリック: 57回この商品を含むブログ (7件) を見る やっぱり、このひとは外界の状況と心理的な低回の拮抗を主題にしたものが、小説に深みが出る。で、それが亜種的な教養小説の趣…

森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』(角川書店)レビュー

ペンギン・ハイウェイ作者: 森見登美彦,くまおり 純出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/05/29メディア: 単行本購入: 30人 クリック: 1,716回この商品を含むブログ (200件) を見る 上手いもんです。センス・オブ・ワンダーの…