作者名タ行

高林さわ『バイリンガル』(光文社)レビュー

バイリンガル作者: 高林さわ出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/05/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 第5回福ミス受賞作。やや無骨な手付きを思わせるが、中盤あたりからドライブがかかり、サスペンス・スリラーとして満足できる。ミ…

鳥飼否宇『憑き物』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)イヅナは『障る』動物なんだ。人間にとっては悪い霊だ。キミの言い方に従えば、イヅナはすべて黒イヅナなんだよ。善良な白イヅナなんて存在しない」(「幽き声」p.31) 憑き物 (講談社ノベルス)作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 講談社発…

竹吉優輔『襲名犯』(講談社)レビュー

襲名犯作者: 竹吉優輔出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/08/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 何年か前に、某誌の評論家座談会で、出席者のひとりが、乱歩賞の常連投稿者がついに受賞したことに対して、受賞してもらわないとあとが…

友井羊『ボランティアバスで行こう!』(宝島社)レビュー

ボランティアバスで行こう!作者: 友井羊出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2013/04/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る デビュー後第一作は、連作短編集で、効かせたギミックが、主題性とカタルシスに直結して、いい感じ。それぞれの人生の…

竹内真『図書室のキリギリス』(双葉社)レビュー

図書室のキリギリス作者: 竹内真出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2013/06/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (11件) を見る いやー、涙がちょちょぎれるほど、懐かしい本のタイトルが。マガーク少年探偵団は、くるねえ。ブッキッシュ…

田中啓文『シャーロック・ホームズたちの冒険』(東京創元社)レビュー

シャーロック・ホームズたちの冒険作者: 田中啓文出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/05/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る ミステリ・パロディにホラーを持ってこられるのは、強いよね。忠臣蔵のやつは、オチに感涙。八雲のやつは…

筒井康隆『聖痕』(新潮社)レビュー

聖痕作者: 筒井康隆出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/05/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る 要するに、去勢小説なワケです。日本の現代史と主人公を重ね合わせる意図は露骨だけれども、3・11から逆算して、ゆるやかな終末的観想…

月原渉『月光蝶 NCIS特別捜査官』(新潮社)レビュー

本日のエピグラフ 「今回の一連の事件では、基地の内と外を隔てる観念の壁が、内外の正義をも分かちました。それは真実から遠ざかる術であって、真実に寄りそう方法ではありません。(…)」(p.243) 月光蝶―NCIS特別捜査官作者: 月原渉出版社/メーカー: 新潮社…

大門剛明『海のイカロス』(光文社)レビュー

海のイカロス作者: 大門剛明出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/04/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 次世代エネルギーを題材にした倒叙型本格。プリミティブなドラマ性が、幾重にも仕組まれた完全犯罪のトラップによ…

高井忍『本能寺遊戯』(東京創元社)レビュー

本能寺遊戯作者: 高井忍出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/02/21メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (8件) を見る 史実再検証読物として面白く読んだのですが、小説としての作者のねらいが奈辺を目指したのかが、ちょっとつかみ切れ…

天童荒太『歓喜の仔 上・下』(幻冬舎)レビュー

歓喜の仔 上巻作者: 天童荒太出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2012/11/22メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (14件) を見る歓喜の仔 下巻作者: 天童荒太出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2012/11/22メディア: 単行本 クリック: 3回この商品…

高田崇史『毒草師 パンドラの鳥籠』(朝日新聞出版)レビュー

毒草師 パンドラの鳥籠作者: 高田崇史出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2012/12/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る このシリーズ四年半以上ぶりの第三弾。浦島伝説が、いつの間にかあの伝承やらこの歴史的事件やらと結びつき――あれ…

友桐夏『星を撃ち落とす』(東京創元社)レビュー

星を撃ち落とす (ミステリ・フロンティア)作者: 友桐夏出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/06/28メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 103回この商品を含むブログ (29件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレ…

大門剛明『父のひと粒、太陽のギフト』(幻冬舎)レビュー

父のひと粒、太陽のギフト作者: 大門剛明出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2012/11/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る コンスタントに新作を上梓し続ける作者が今回挑んだのが、農業問題。トピックスをひと通りサルベージして、ミステリーの雛型…

鳥飼否宇『妄想女刑事』(角川書店)レビュー

妄想女刑事作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/09/26メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (7件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 ト…

大門剛明『レアケース』(PHP研究所)レビュー

レアケース作者: 大門剛明出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2012/08/07メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログを見る 生活保護行政の実態を題材に、「ねずみ小僧」というガジェットを大胆にとり入れた。ミステリ的プロットは、「ねずみ小僧」…

竹本健治『かくも水深き不在』(新潮社)レビュー

かくも水深き不在作者: 竹本健治出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログを見る 連城三紀彦の某名短編のテーマを、作者が料理し直してみたら、こんな感じになる。恐怖と狂気の感触を、じわじわ…

津原泰水『猫ノ眼時計 (幽明志怪) 』(筑摩書房)レビュー

猫ノ眼時計 (幽明志怪)作者: 津原泰水出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/07/01メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (12件) を見る んん、シリーズが終わるのか。ひとを食った要素が、前作と比べて大きいような気がする。飄々とした文体…

高野史緒『カラマーゾフの妹』(講談社)レビュー

カラマーゾフの妹作者: 高野史緒出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/08/02メディア: ハードカバー購入: 2人 クリック: 39回この商品を含むブログ (53件) を見る 今年の乱歩賞は、風格で勝ち取った感じ。名作の続編パロディだけれども、19世紀末の革命前…

辻村深月『鍵のない夢を見る』(文藝春秋)レビュー

鍵のない夢を見る作者: 辻村深月出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/05/01メディア: ハードカバー クリック: 239回この商品を含むブログ (62件) を見る まあ、別に作者が「直木賞作家」という肩書きでやっていくとは、露ほども思ってないから、文春の編…

大門剛明『氷の秒針』(双葉社)レビュー

氷の秒針作者: 大門剛明出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2012/06/20メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 殺人罪の公訴時効の撤廃というトピックそれ自体を、スリリングに小説作りに活かしているかといえば、留保はつくだろう。…

高橋源一郎『さよならクリストファー・ロビン』(新潮社)レビュー

さよならクリストファー・ロビン作者: 高橋源一郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/04/01メディア: 単行本 クリック: 23回この商品を含むブログ (33件) を見る 3・11をまたいで『新潮』に掲載された六編を収録。作者の現在の関心は、おそらく“世界”の…

知念実希人『誰がための刃 レゾンデートル』(講談社)レビュー

誰がための刃 レゾンデートル作者: 知念実希人出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/04/26メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (6件) を見る 第4回福ミス受賞作は、スリラー色の濃い作品。島荘の選評にもある通り、全体的なトーンは劇画調…

田南透『翼をください』(東京創元社)レビュー

翼をください (ミステリ・フロンティア)作者: 田南透出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/01/27メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (8件) を見る クローズドサークルものと思いきや、読者の予想の斜め上をいく展開に。ていうか、心理…

友井羊『僕はお父さんを訴えます』(宝島社)レビュー

僕はお父さんを訴えます (『このミス』大賞シリーズ)作者: 友井羊出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2012/03/09メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 56回この商品を含むブログ (14件) を見る このミス大賞の優秀作に留まったのは、ひとえに語り口のぎこちなさ…

津原泰水『11 eleven』(河出書房新社)レビュー

11 eleven作者: 津原泰水出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2011/06/16メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 433回この商品を含むブログ (27件) を見る いやー、これを上げるのを、すっかり忘れていましたね。バラエティに富んでいるから、高品質な短編…

高橋源一郎『恋する原発』(講談社)レビュー

恋する原発作者: 高橋源一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/11/18メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 14回この商品を含むブログ (39件) を見る あはは、たぶん燃料棒とファルスを象徴的に同一化させたところが、発想の出発点だと思うぜ。ってことは…

月原渉『世界が終わる灯』(東京創元社)レビュー

世界が終わる灯作者: 月原渉出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/09/29メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 受賞第一作は、…

鳥飼否宇『物の怪』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)獲物に気づかれないように近づくために、周囲の環境と同じような模様になるものさ。攻撃的擬態だよ。どちらも普遍的な生存戦略。(…)」(「洞の鬼」p.120) 物の怪 (講談社ノベルス)作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/0…

柄刀一『翼のある依頼人』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 眼前の死に戦いて引き金を引く。捨て身の反撃。/(…)/撃ち返す甲冑。銃も持たず、射手を倒す。(「見えない射手の、立つところ」pp.155‐156) 翼のある依頼人作者: 柄刀 一出版社/メーカー: 光文社発売日: 2011/07/20メディア: 単行本(ソフ…